大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)3013号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人川上隆、同一瀬英矢の上告趣意第一点について。

論旨(一)摘示の原審の判断は正当であって、論旨(一)は理由がない。

論旨(二)は憲法三九条に対する独自の見解であって、当裁判所判例(昭和二四年(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決、集四巻九号一八〇五頁)の採らないところである。

控訴審の事実の取調が控訴趣意の当否の判断に制約されることは論旨(三)の所論のとおりであるが、控訴審が第一審の訴訟手続に法令の違反があってその違反が判決に影響を及ぼすことが明らかであるとして第一審判決を破棄差戻した場合において、差戻を受けた第一審裁判所が審理するにあたっては、控訴審の判断部分(本件で同意の撤回は不当であるとする部分)に拘束され、訴訟手続上これに抵触することは許されないけれども、その他は全く自由に審理を進めることができるのであって、差戻前の訴訟手続をひとまず追った後でなければその後の手続を行い得ないものではない。従って、公訴事実の同一性を害しない限り直ちに訴因変更の請求を許容してその後の証拠調を施行することは勿論可能であるといわなければならない。

上告趣意第一点中その余の論旨もすべて採用に値しない。

同第二点について。

判例違反をいうも、所論引用の判例は本件に適切でない。

同第三点について。

裁判が迅速を欠いたとしても原判決破棄の理由にならないことは、すでに当裁判所の判例(昭和二三年(れ)一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決、集二巻一四号一八五三頁、昭和二三年(れ)一五七九号同二四年三月一二日第二小法廷判決、集三巻三号二九三頁)とするところである。公訴棄却の言渡をなすべきものとする論旨は、独自の見解であって採用の限りでない。

また記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により主文のとおり決定する。

この決定は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例